human kinds

ある人工種が存在しているということは、さしあたり任意の社会科学が、適合的であることを目指してそれを作り上げたということだろう(行為から人へと向かう実証主義、ただし種形成は人間社会科学に特有のことではないけど)。だけどそれは、定義される当の人びとに入手可能な記述である(人工種あるいは相互作用種)。よって「ある時ある場所に、ある人びとの種が、存在している」ということは、分類を読み取ることでそれを作る人びとと、当の分類と、分類される人びととの相互作用の結果である。
ここから導かれる含意は、次。
(1)ネガティブに言うと:任意の分類に適合する人びとが、あらかじめ手つかずの形で存在した(しない)と措定することはできない。対象そのものに触れたと思っても、そこにはすでに言われたことの痕跡が残っている、というより既に言われていたことをなぞるだけだろう(ループの中に留まっているだけ?)--「プロトタイプはわれわれを現実の人間から遠ざける」(Hacking, 1995:35)。
(2)しかしポジティブに言うと:ループ的社会的状況のなかにあるものとして、存在するとはそのかぎりのものであるという意味で、任意の人びとの存在を捉えること(よって、「ループ内的存在-だから-人工物だ」などという判断もしない)。そこから、ある状況での分類の成立や変容について、既に存在している分類のうえで、またそれを元に、分類を作り出しあるいは取り入れる人びとの相互作用を、他者成型や自己成型を通じての管理や統制などとして、見ていくこと。
Rewriting the Soul: Multiple Personality and the Sciences of Memory