Rose, N., 2007

  • Rose, N., 2007, The Politics of Life Itself, Princeton University.

確認までに、遅まきながら第6章「ゲノム医療時代の人種」に目を通す。DNAへの医学的・薬学的調査における、人種カテゴリーやエスニック・グループ・カテゴリー使用について、視座を設定しようとする論文だと思われる。こうしたカテゴリー使用を従来の人種主義的科学との関わりで把握することはあまり適切ではないという否定的メッセージは明瞭だと思う。ただしそれに代えて提示されている視座はといえば、あまり明瞭に理解できたとは思えない。
たとえばこうした調査で用いられている人種概念は、類型論的なものではなくよって個人の特徴を決定づけるような力を与えられてはいない。その点で、現在におけるこうしたカテゴリー使用について、かつての人種主義的科学と結びつけて判断していくことは適切ではないのだろう。そしてそれだからこそ、こうしたカテゴリー使用をつうじて、個人と集合体が被るアイデンティティ理解の変容が焦点になるはずだと思う。けれどもその点については、バイオ・ソーシャル・グループについて触れるだけにとどまっていて当の変容する理解の論理にまで踏み込まれていない。いくぶん歯がゆい。その辺が、いまいちつかめたという感じがしない理由だろう。

The Politics of Life Itself: Biomedicine, Power, and Subjectivity in the Twenty-first Century (In-formation)

The Politics of Life Itself: Biomedicine, Power, and Subjectivity in the Twenty-first Century (In-formation)