レヴィ=ストロース 生誕100年
復刊や近刊、シンポジウムなどが目白押しですね。
以下は、個人的な話し。
大学院入試の勉強をしていたころ、僕はレヴィ=ストロースのRace et histoireを、訳書を隣におきながらフランス語の勉強として訳していた。これはもとはといえばユネスコの叢書のひとつとして1952年に刊行されたものだ。
もとから人種・エスニック関係論に関心があったこともあり、この書を選んだのだった。その後はといえば、僕はあまり熱心な読者とは言えなかった。翻訳書でいくつかの書物と論文に触れる程度のつきあいだった(とはいえ『遠近の回想』は回想としての20世紀文化史ともいえる驚くべき本だ)。
とはいえ、ここ数年、仕事の行きがかり上、ボアズの論文を読んだり(かれは米国のボアジアン以上のボアジアンだ)、ユネスコの1950年代の人種に関する声明を検討したりするなかで、レヴィ=ストロースのことが個人的にも気になっていた。そんななかで1971年のユネスコ講演であるRace et culture(「人種と文化」)なども読み直したりもしてきた。
地理的・文化的・言語的距離が消失させられていく現代社会にたいして、文化的および遺伝学的進化の観点から疑問を投げかけるのが、この講演のひとつのメッセージである。
もちろんこうしたメッセージからは、純粋な文化と遺伝的構成の消失を嘆くサルベージ人類学(あるいはサルベージ遺伝学?)の構図を読み取ることはできる。また文化的差異と距離の保持という主張が人種主義の隠れ蓑として用いられてしまうという指摘ももっともな話しだろう。
とはいえこのメッセージそのものを、いま見たような読み取り方を理解しつつも、受け入れてその意味を考えていくことが必要なのだろうと思う。