新しい本

  • 斎藤成也, 2007『ゲノム進化学入門』共立出版.

年末年始にざくっと読んでおいたもの(しかし第11・12章についてはほぼ死亡しておりました)を、もう一度引っ張り出す。問題が、ふるーい文献(リプリー対ボアズ)からきちんとつながっていることを再確認できる。例えば次の一節。

6.6.3 集団を定義する困難
 集団遺伝学において最も重要な量のひとつは、集団の個体数であるはずだが、実は集団を定義するのが簡単ではない。ある集団内の個体は相互に交配可能である必要があるが、ある個体と別の個体が交配可能かどうかは、実際に生物が生息している状況で簡単に推測することができない場合が多い。生物分類でも同じ問題がある。生殖隔離が明確に存在していれば異なる種と定義されるが、地理的に大きく離れた場所に生存する2個体が交配可能かどうかは分からないことがあるからだ。
 明らかに同一種に属すると分かっている場合でも、地理的に離れた個体群はそれぞれ別の集団として扱うことがある。しかし、ひとつの集団が地理的に広く分布していれば、さらにその集団内に分集団が存在する可能性がある。このとき、種全体をひとつの集団と考える場合、その下のまとまりを集団と考える場合、さらに分集団を単位に考える場合で、集合の個体数も集団の進化史も大きく変わってくる。このように、集団とはきわめて曖昧な単位であることを認識しておく必要がある(103頁)。

ゲノム進化学入門 CD-ROM付

ゲノム進化学入門 CD-ROM付

この本の大量の参考文献は、他の参考資料やプログラムとともに、CD-ROMに収まっています。したがってこの本は、パソコンの前で読書しなければなりませぬ。