study

病状の分類と発明の、二つのベクトル

Hacking, I., 1982, "Biopower and the avalanche of printed numbers," Humanities in Society, 5, 279-295. =2012, 岡澤康浩訳「生権力と印刷された数字の雪崩」『思想』1057, 76-101. 30年ほど前に書かれたハッキングの論文。この後、ハッキングは1990年…

being capable of adequate self-description

「適切に自己を記述することができること」――H. サックスによると、人間とはそのようなことができる動物であるそうだ。 ともするとこうした能力の生物学的基盤などを連想しがちな言い方ではあるけれど、そうした連想の手前で、まずは自分の行っている事柄を…

病院の外で――お悔やみに関する覚え書

Sudnow, D., 1967=1992『病院でつくられる死――「死」と「死につつあること」の社会学』せりか書房. 表題の論文は、この書の第6章。 今年度の大学院での授業は、病気や死に関係する質的研究をあれこれ読みながら、ディスカッションすることを中心に行っている…

構造化された直接性(?)

Leudar, I., Sharrock, W., Hayes, J., Truckle, S., 2008, Psychotherapy as a "structured immediacy" Journal of Pragmatics, 40, 863-885. この論文の目的は、精神分析から行われる心理療法セッションにおいて行われている事柄を、その実践の内側から記…

「下働きとしての哲学」としての、自閉症の現象学

Zahavi, D., 2005, "Theory of mind, autism, and embodiment," Subjectivity and Selfhood, MIT Press, 179-222. 自閉症について、S. バロン−コーヘンらによってなされている心の理論による議論について、その基礎的概念の検討を通じて批判をしていく論文。…

Neurotypicals

ニューロ・ティピカルス。どう訳すべきなのだろう。典型的な脳神経の持ち主という感じなのだろうか(もちろん「正常」とか「ノーマル」という語はふさわしくない)。 ウィキ・ペディアによると、この概念は脳神経系レベルに絡めて自閉症以外の者を指すべく、…

アイデンティティ・と・政治

アイデンティティにもとづく政治について述べるなかでのJ. バトラー。「ユダヤ人を愛そうとも憎もうとも、まさに同じ信用ならない操作に荷担している」『みすず』589号, 6-24頁。 私たちは、考察の対象が実際にはパレスティナにとってのある新たな政治秩序で…

科学(者)のなかの哲学(者)

哲学の生存戦略とそのアジェンダーとの副題をもつ論文の中の一節から。 科学者も探求の或る局面で、複数のリサーチ・プログラムの優劣を論じたり、ある結果を発見といってよいかどうかを考えたり、これまで使ってきた概念を整理したり、複数の理論の相互関係…

What is an author

ある事情から、読み直す。関連する部分の抜き書き。 ...... I believe that one could find here an introduction to the historical analysis of discourse. Perhaps it is time to study discourses not only in terms of their expressive value or forma…

homework, not fieldwork

K. ヴィスウェスワランの、いまとなってはすこし古い書のなかの言葉ですが*1、こうした課題はこれまではあまり適切ではない道具で遂行されてきたように思います。 ホームをこれまでと同じようにフィールドワークしたって、ダメでしょう。ミイラ取りがミイラ…

歴史・記憶・人種

かなり過ごしやすくなった一日。大学の居室にて。 M. フーコー『社会は防衛しなければならない』を読み返す。系譜学のひとつのあり方として、政治=戦争の言説が検討されまたこれが断念されていく講義なのだが、この断念される当の言説とその戦術について、…

影か道標か

『概念分析の社会学――社会的経験と人間の科学』(ナカニシヤ出版)が、おかげさまで再版されました*1。 僕は、この本については、企画編集と(実際には編集はあまりできてませんが)人種概念についての寄稿という形で、関わっています。それ以後、人種につい…

文化の問題

Hacking, I., 2009, "The question of Culture: Giulio Preti's 1972 Debate with Michel Foucault Revisted," Diogenes, 224, 81-5. (http://http://online.sagepub.com/search/results) Giulio Preti Prizeの受賞講演。フーコーとのあいだに僅かなやりとり…

自然発生的社会学

Rose, E., 1960, "The English Record of a Natural Sociology," American Sociological Review, 25(2), 193-208. 著者については、初期エスノメソドロジーの歴史に一枚かんでいた人ということぐらいしか知らない*1。たとえばProceedings of the Purdue Symp…

テクストを(もう少し)分析する

Watson, R., 2009, Analysing Practical and Professional Texts: A Naturalistic Approach, Ashgate. 相変わらずこの本についてです。年始から今日までは*1この本の読書中につけたメモや関連した論文に目を通したりしていました。そんなわけで、ようやく今…

テクストを分析する

Watson, R., 2009, Analysing Practical and Professional Texts: A Naturalistic Approach, Ashgate. おそらく2009年のなかで最も印象に残ったテクストでした*1。 この本の立場を一言でいえば、日常言語的手続きを用いて作り上げられ・読まれるひとつの社会…

Button & Sharrock

Button, G., and Sharrock, W., 2009, Studies of Work and the Workplace in HCI: Concepts and Techniques, Morgan & Claypool. 95頁ほどの小さなテキスト。コンピュータ・システムの設計という目的に向けたワーク研究とそのためのフィールドワーク方法と…

Genetics and Soceity

Atkinson, P., Peter Glasner and Margaret Lock, eds., 2009, Handbook of Genetics and Society: Mapping the New Genomic Era, Routledge. 新遺伝学の時代における遺伝学と社会の関係の地図を描くといった主旨でしょうか。 M. リンチも第20章において法医…

RaceSci

トロント大学歴史学部による、科学技術や医療における人種概念の検討のためのウェブ・フォーラム。 あまり規模は大きくなく、おもに2000年代に英語圏で発表された一般記事が掲示されています(とはいえ「最新」が2006年と、更新にはあまり熱心ではないようで…

Numero-politics

授業ののち、いろいろとバタバタする。 あの書類をメールで送り、この書類。その間にあの書類のリアクションが来てそれを反映させ、印字している間に、ふたたびこの書類....。こんな感じで書類作成のタスキがけをしていると、学生さんがやってくる。 レポー…

自閉症の言語

Hacking, I., 2009, "Autistic autobiography," Philosophical Transactions of the Royal Society, B, 364, 1467-1473.自閉症の経験を記述したナラティブは数多くある。当人による「内側inside」からのものの嚆矢はグランディンの自伝(『我、自閉症に生ま…

Ryle, 1971→2009

Ryle, G., 1971→2009, Collected Papers, 2 Vols., Routledge. Critical Essays: Collected Papers Volume 1作者: Gilbert Ryle出版社/メーカー: Routledge発売日: 2009/06/15メディア: ペーパーバック クリック: 2回この商品を含むブログ (2件) を見るColle…

Rabinow,1996

Rabinow, P., 1996, Essays on the Anthlopology of Reason, Princeton U. P. おもに第5章と6章を読む。人間についての生物学的な知識が人間のアイデンティティにかんする既存の概念の意味を変容させ、ひいては社会的関係にかんする新しい論理的可能性を開い…

Robin O. Andreasen

このところ、Robin O. Andreasenによる科学的人種概念についての論文を読んできた。彼女の主張の基本は、人間の繁殖集団についての単系統群として生物学的人種概念を定義し直すことができる、というものである。そのうえでいくつかの含意が引き出されたり、…

佐藤(編), 2009

佐藤方宣(編), 2009『ビジネス倫理の論じ方』ナカニシヤ出版. 経済思想史・社会思想史を専門とする研究者が、ビジネスの倫理という現代的な主題に取り組んだ書。思想史家たちがこのような主題に踏み込んでいくにあたり、自らの研究分野が「思想を対象とし…

綾屋・熊谷 2008

綾屋沙月・熊谷晋一郎, 2008『発達障害当事者研究——ゆっくりとていねいにつながりたい』医学書院. 遅まきながら読み始める。まずは、以下の部分に目が洗われる思いをした(33頁)。 ....時刻で行動を規定し、「12時です。昼ごはんを食べます」という<します…

再訪、Joan W. Scott

今後の進み方について、あれこれと考えるなかで、古いファイルボックスからJ. W. スコットのファイルを引っ張り出し*1、そのなかからよれよれで蛍光ペンだらけの次の論文を読んでみる。 Scott, J. W., 1991, "The Evidence of Experience," Critical Inquiry…

Suchman and Jordan

Suchman, L., and Jordan, B., 1990, "Interactional troubles in face-to-face survey interviews," Journal of the American Statistical Association, 85, 232-41.→2003, Lynch, M. and Sharrock, W., eds., 2003, Harold Garfinkel, vol. II, Sage, 381-…

notes

注を断片的に翻訳する・翻訳する・翻訳して……、ようやく一段落(じつは本文の翻訳と付き合わせたりするので、意外に神経を使う)。 さてあしたは、最終チェックをする。そのうえでこの文献を含めて、今月末のあるお話にそなえて、読むべき文献をリストアップ…

notes

ふたたび翻訳に。100あまりの注をひたすら訳す。本文とは異なり、断片的な仕事を積み重ねていく。